青森県津軽地方。岩木山や白神山地の恵みや冬の寒さといった、四季の特徴が色濃く反映された環境の中で作り食べ継がれてきた伝承料理。
ここに宿る素朴な味と丁寧な調理法といった特長の露出を通じて、伝承料理のブランディングを目的としたプロジェクトです。

プロジェクトの目的を定食づくりから、伝承料理のブランディングに転換した理由。

元々、このプロジェクトは津軽地方の伝承料理から代表的なものを選び、
「じょんがら御膳」という名称の統一定食メニューとして、飲食店において提供することが目的でした。

対象は主に観光客の方。春にはさくらまつりが、夏にはねぷた祭りが開催され、観光イベントが多々ある一方、
弘前を中心とした津軽の地には、「ならでは」としてプロモーションされている料理が少なく、
方言の響きや伝承料理といったキーワード性の高い料理を提供することで、食の面でも満足してもらおうというものでした。

定食を作ることがゴールということで、一汁三菜のスタイルを基本形としてご飯ものや汁もの、主菜に副菜、箸休めの漬物など。
「観光客の視点として興味が湧きそうな料理」という軸を持って、様々な文献からジャンルごとにリサーチしました。

ところが、メニュー候補としてリストアップした料理の数は400種類近く。
しかも、それら一品一品の特長が明確に一本立ちしていたのです。

「こんなにすごい料理がたくさんあるなんて!」ベッドタウンで生まれた自分にとって、そう感じるのは必然でした。
そして、その一方で「定食としていくつかの料理を絞り込むなんてもったいない。」と強く感じたのです。

もちろん、定食づくりをゴールにするのも一つの正解なのですが、伝承料理について何も知らない観光客に対して提供する際、
一つ一つの料理に関するストーリーを伝えることが欠かせません。消費と共に共有される価値はここにあるのですから。

そこで、作り食べ継がれてきた伝承料理の存在や特長について露出を行い、
ストーリーを伝えて認知度を高めた後に、飲食店によってこれらを一品料理として提供し、
その先に定食として提供したほうが、飲食店にとっても長い目で見ればいいのでは?と感じたのです。

つまり、伝承料理から定食を作るというミッションを「数多くの存在する伝承料理のブランディングを経て、その後に定食を作る。」という流れにしたのです。

コンテンツは商品ではなく伝承料理の食文化。「料理遺産」という考え方

方向性が固まってからは、「その伝承料理は、今も食べ継がれているか?」という条件を核にして、
リストアップしたメニュー候補の中から地元の方と共に絞込を行い、約400近くあった伝承料理から133種類に絞り込みました。

この中には、泣く泣くリストから落とした料理も多々あるのですが、
目的は観光客の方に伝承料理の魅力を知っていただくことだったので、
飲食店で提供可能なものや、料理の源となる食材や調味料に触れる機会が多いものを中心にセレクトしました。

その中で「絞り込んだ料理たちを何と呼ぼうか?」という問題が発生しました。

元々、食べ継がれるべき価値を一番よく知っているのは地元の方々。
そして、作り食べ継ぐことで食文化を守るのも地元の方々。
なので、その地方にとってみると世界遺産のような存在なんだ。
そこで「料理遺産」と呼ぶことにしたのです。

事業が進むとこうした選択過程そのものが取材対象となり、
料理遺産としてリリースした翌日には、県内の各種メディアでこぞって紹介されました。
一つでも多くの料理の魅力を多くの方に伝えるための、第一関門は突破しました。

認定は終点ではなく始発点。

その後、認定料理を提供する飲食店を「伝承店」として認定したり、
販促グッズとしてマップや「招布」と呼ばれる幟のようなものを制作しました。

もちろん、一つでも多くの料理の魅力をどうすれば多くの方に伝えるために、
133品の料理を少しずつ紹介するためのウェブサイトの制作と維持は欠かせません。

こうして選ばれた料理が持つ魅力は一言では語り尽くせないもので、
現在もウェブサイトの運営や駅弁「ばっちゃ御膳」の提供を継続して行うことで、ブランディングがなされています。

「津軽地方の伝承料理」は潜在的だった価値が顕在化し、同時に商業的価値の再評価が行われました。
今日も多くの観光客の方に食べ継がれ、地元の食卓で作り継がれることで、理想的な伝承の姿が構築されています。

ウェブサイトはこちらから>>http://www.tsugaru-ryouriisan.com/blog/

※「料理遺産」は登録商標です。